宇多喜代子著『暦と暮らす―語り継ぎたい季語と知恵』

 宇多さんが書かれた表記の著書を読む機会を得た。と言ってもまだ全部を読んだわけではないが、皆さんへのご紹介のつもりで、感じたことや思い付きを書いてみたい(NHK出版、2020年4月15日刊行)。宇多さんのご経歴は、いまさらご紹介するまでもないが、蛇笏賞や日本芸術院賞など多くの賞を貰われ、令和元年には文化功労者に選ばれておられる。

 該著は、「NHK俳句」テキストに連載した記事を再編集したもので、その名の通り、俳句に「暦」がいかに密接にかかわっているかを丁寧に解説している。「暦」はすなわち「農暦」であり、季語は農事に深くかかわっている、と分かる。とうぜん二十四節季に従って、例句を交えて懇切な記述がある。


宇多喜代子NHK.jpg


 この著書の一つの特徴は、添えられている写真が見事に雰囲気を高めていることである。写真提供は、農山漁村文化協会発行の『写真で綴る 昭和30年代 農山村の暮らし 高度成長時代以前の日本の原風景』(写真:武藤盈、聞き書き:須藤功)による、とある。
 上に掲げた表紙の写真を見て戴くと分かるのだが、田植えの農婦の動作が映されている。農婦の足運びの微妙さが観るものに伝わってくる。懐かしい風景である。
 このような思い出の風景が四季別にところどころに挿入されている。著作権を気にしながら、もう一つだけ写させて戴いたのが、次の写真である。夏の日、田植えは家族総出の大仕事である。幼子がイズミ(子供用の籠)の中で眠っている。大きめの傘が竹棹に結わえられて籠のそばに立てられており、幼子に心地よい日陰を作っている。まさに昭和の農村の典型的な風景である。


宇多喜代子NHK挿絵.jpg


 該著を読む機会は5月16日から始まった。立夏を過ぎたばかりであった。なので、そこから読み始めた。「立夏」「小満」「芒種」「夏至」「小暑」「大暑」とある。例句がいくつか載っているが、筆者の懐かしさは、次の句に到って膨れ上がる。
   プラタナス夜もみどりなる夏は来ぬ   石田波郷    該著67頁
少し進むと
   やはらかき母にぶつかる蚊帳の中    今井 聖      103
筆者がときどき参加している「街」句会の主宰なので、身近に思ったりする。
 これからゆっくりと、毎日少しずつ読み続けて行こうと思う。

 宇多さんが、あとがきに「いまだに西暦が苦手な私には、出来事を西暦表記されるとそれを和暦に換算しないとよく理解できないという弱点があります」と書いている。筆者もまさにその通りで、西暦でなく年号でいわれれば、たとえば「昭和」だとピンとくる。西暦だと、25引いたりして昭和に換算しないと感覚がつかめないのだ。

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