なつはづき句集『ぴったりの箱』

 なつはづきさんは、2018年に現代俳句新人賞を、2019年には攝津幸彦記念賞準賞を得ている才媛俳人である。その第一句集(2020年6月22日、朔出版発行)である。

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  筆者(=栗林)の共感句は次の通り。

013 花粉症恋なら恋で割り切れる
018 右手から獣の匂い夏の闇
021 カピパラはいつも遠い目草田男忌
023 身体から風が離れて秋の蝶
025 人事部長ゴーヤずうずうしく繁る
033 婚期かな前歯隠している兎
048 桜桃忌鎧のようにつけまつげ
055 星の夜や結うには少し早い髪
062 風花やふと記憶から声がして
091 冬怒濤少ない色で生きてゆく
092 のりしろに糊が足りないまま師走
104 ぴったりの箱がみつかる麦の秋
116 紺セーター着ていい人のふりをする
117 狐火や絵本に見たくないページ
126 リストカットにて朧夜のあらわれる
133 ぺちぺちと歩くペンギン梅雨明ける
144 雪女ホテルの壁の薄い夜

 跋は宮崎斗志さんが……なつはづきさんの句は、独特な「身体感覚」が宜しい……として、多くの佳句をあげている。「恋」もテーマであり、成功した句が多い、とも書いている。同感である。

 上に、筆者(=栗林)が選んだ句は、絶妙な季語の使われ方をしている、と感じ入った句である。筆者は、この句集の宜しさは、季語の配合の魅力ではなかろうかと思っている。予定調和的でない季語の斡旋の新しさがある。しかし中には実験的なものもあるように思える。つまり、詠みたいという感動が不確かな句でも、季語の斡旋により、読者が自由に詩を立ち上げてくれるであろう、という期待のもとに書かれている句もあるように思えるのだ。「思えるのだ」と書いたのは、ただ単に筆者の読解力が及ばなかったためだったからかもしれないからだ。この作り方は、筆者には、絶頂期の飯島晴子のように見える。晴子は俳句を書く前に感動があってはならない、とまで言った。感動は読者にまかせるのだ。だから予定調和的な季語の斡旋を、絶頂期の彼女はやらなかった。なつはづきさんも、そんなところがあるように思えた。それらの句は、ときとして私にとっては難解であった。たとえば、〈080思い出はいくら積み上げても案山子〉〈母の背が饒舌になり鰯雲〉など、斡旋された季語「案山子」「鰯雲」など、私にはなぜ絶対にその季語でなければならないのか、解釈が難しかった。そこに彼女は、読者の積極的な参加を求めているのだろう。筆者も正解に近づこうとして、想いを巡らせている。そしてそれらの句は彼女の将来のさらなる伸びを物語っているのかもしれない。
 啓発された句が沢山ありました。多謝です。

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