増田まさみ句集『止まり木』

 増田さんの第六句集である(霧工房、2020年6月26日発行)。氏は俳人であるが、同時に詩を作り、絵を描く芸術家である。この句集の表紙や挿画は、増田さんの旧知のお仲間、森田廣(94歳)さんのもので、その非具象派的画風は増田さんの俳句作品ともうまく調和している。第三句集『冬の楽奏』でスウェーデン賞・ソニー賞・兵庫県芸術文化団体の賞などを受けている。自著・共著が数多い。

増田まさみ.jpg


 筆者の共感した作品は次の通り。全96句から9句選んだ。

  花石榴あるけば冥し母のくに
  黴の花用なき猫を呼びもして
  星流るひもじき鶏を煮て食うて
  秋霖やちくわに怖き穴があり
  えんえんと泥濘む母の褥かな
  いたずらに老いて螢の聲をきく
  凍蝶に躓きわれを見うしなう
  芥子粒のように母逝く春の山
  天涯に吃音の蝶ひるがえる
  
 一読、筆者(=栗林)の鑑賞力を超えた作品が多かった。予定調和に収まった句は一つとしてない。それはオリジナリティがあることであり、羨むべきことである。鑑賞に、いろいろ思いを巡らし、楽しんだが、腑に落ちる句が多くはなく、申し訳ない気持ちである。
 その中で、筆者が、鑑賞の糸口を見つけたかな、と思えた句が、右の9句である。しかしそれらは、まだ鑑賞の入口にあって、出口に到達していない歯がゆさを、自分自身に感じている。
 「用なき猫を呼ぶ」はムードある表現。「母の褥がぬかるむ」のは切ない。声を出さないはずの「螢の聲」をきくというのは何かの暗喩。躓くことのあり得ない「凍蝶」に躓く作者の繊細さ。声を出さない筈の蝶が「吃音」を出しながら翻って行くとの見立て。どれもが屈折の多さと名状しがたい奥行きの深さを感じさせる。
 同じ日に、伝統派の著名な方の句集が届いたが、その300句ほどの全部が筆者の理解の範囲にあった。一方で、増田さんのは手ごわい。しかし、強い魅力がある。得体の知れない魔力がある。筆者は、この系統の俳人を「こころざし髙い少数集団」として、日ごろから敬意を表している。願がわくは、もっと理解出来るようになりたいと願っている。いや、俳句は理解することではない。感じることだと信じて、精進している。
 増田さん、有難う御座いました。下記は森田廣さんの挿画です。

止まり木挿絵.jpg


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