橋本石火句集『犬の毛布』

 橋本さんは「ハンザキ」創刊主宰。それまで「青」「年輪」(現在編集長で幹事長)「ゆう」に所属。既刊句集『はんざき』『かはほり』につぐ第三句集である(ふらんす堂、2020年8月1日発行)。

橋本石火句集.jpg


 自選句は次の15句。

  ふぐりまで風を通して夕端居
  捨ててある蕪より蕪の花が咲き
  醍醐派の秋の大きなかたつむり
  蠅がをり朽木はさみて蜘蛛がをり
  狐火に閂をするだけの小屋
  山遠くあれば静かに虫送り
  秋風や地より浮き立つ木偶の脚
  走り根に日のとどきたる寒施行
  恍惚の母に隣りぬ庭うらら
  苗障子少し直して行きにけり
  菊焚けば波音くらき阿漕浦
  短日や仏像二体貸し出され
  水占の水足してゐる三日かな
  えんぶりを昨夜舞ひし子か登校す
  干布団犬の毛布がその横に

 筆者の共感の句は次の通り。

007 寒餅のまだやはらかき日暮かな
009 山ひとつ越えて梅の木梅の花
015 写真撮るときの笑顔やさくらんぼ
018 河骨の水のゆらげる近江かな
026 近付いてくれば台風らしくなく
032 かばかりの稲干してある山家かな
035 雪ばんば山の際まで耕され
050 あづまやに恋の落書き百千鳥
055 夕雲のどこか明るき祭鱧
058 山裾に風立ちあがる紅の花
066 もう太ることなき秋の毛虫かな
081 雛出して後の月日の早きこと
093 花の寺雨やんで傘じやまになり
128 苗障子少し直して行きにけり(*)
151 鷹を見て人の話もうはの空
166 ゴミ出しの袋の上の花の屑
180 もの置けばそこに影ある晩夏かな
183 身ほとりに水ある暮らし新豆腐
191 絵屏風の折れしあたりの風情かな

 一読してその句柄は、あとがきにある通り「自然のありのままの姿を 生活のありのままの姿を そこに少しの余情を漂わせた 自然随順の句」である。読者を驚かせるようなことはしないが、ほのぼのと湧いてくるものを感じる。筆者(=栗林)は、そこに好感を持った。句集の中に「水」にかかわる作品が多く、多くの句集に見られる「老病死」は見かけない。
 読み終わって、なにかゆったりした気分を戴いた。多謝。

 自選句と重なった一句を鑑賞しよう。

128 苗障子少し直して行きにけり(*)
「苗障子」は苗床の苗を風から守るもの。それをちょっと直して立ち去ったという句。なんでもない小さな行為。苗を大切に育ててる人の情が見えてくる。この句集には、これと同じ情趣の句が沢山ある。

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